私のペルシャ絨毯コレクション
北島 進      

  目   次     (項目をクリックすると該当欄に飛びます)
    
  はじめに
  1.スーフ織超高級カシャーン絨毯
  2.狩猟絨毯
  3.サデック セーラフィアン絨毯
  4.エラミ工房シルク 絨毯
  5.エルヤシ工房 シルク絨毯
  6.セネー絨毯
  7.タブリーツ絨毯
  8.ナイン絨毯
  9.カシャーン祈祷デザイン絨毯
10.カシャーン ペアーシルク絨毯(2枚1組)
11.フェリアンのバクテヤリ絨毯
12.エスレミ絨毯(ラシュデイザデエ工房)
13.百花繚乱絨毯
14.ゴルダニ サラサリ絨毯
15.鳳凰と生命の木絨毯
16.アラク製ゴルダニ サラサリ絨毯
17.ペアーのバクテイヤリ族絨毯
18.祈祷絨毯
19.ケルマン絨毯
 結び


はじめに 
    私のイランとの関わりは1978年の架空送電線建設プロジェクトから私的な調査旅行の最後となった2016年までの36年間で色々な出会いから19点のペルシャ絨毯を集める事ができた。
   これらの購入履歴には面白い逸話や作品の持っている歴史的或いは民族的な特徴、価値観が包含されて興味が尽きないものである。
   購入に至る過程は最初送電線工事の下請け会社社長の父がテヘラン高級住宅街の絨毯店アマンダのオーナーで,後にその店を引き継いだ息子メデカルチ氏やこの人の友人でテヘランバザールの世界市場へ絨毯の卸業店パジリクを営むラスール エスハーギ氏などを介していた。
   素人裸足の私には絨毯の良し悪しの判断能力は皆無で自分の感性に頼り、気に入ったものを商魂たくましいペルシャ商人との駆け引きで競り落とした物や偶然の出会いで珍しい希少価値のある物を射止めたこともある。
   これらの物はヨーロッパや日本で市販される価格とは比べ物にならないほど安く入手出来る事が面白い。
   特にアンテイーク物は私がバザール内を歩いてラスールの店に入ると周辺の卸店員が自慢のアンテイークを担いで現れる。でもこれはあくまでもサイドビジネスで、本格的な商談になると長方形で約100m X 50m程の敷地の外周囲に8畳ほどの店舗事務所が1、2階並び、その内側のこの大きな広場に各店の絨毯が山積みされている。(右写真)
   この広場で立会い商談が進められる。この長方形の建屋には頑丈な鉄の扉が一箇所あり、営業が終わって、この扉を閉めれば安全が確保される。従って各事務所の入口はこの扉から入って広場側に面している。
テヘランバザールにはこのような区画が幾つも繋がっている。
   一般のイラン人、観光客向けの絨毯店はバザールの正門から入って奥の方の迷路のような暗い通路の両脇に煌びやかな照明の下で所狭しと絨毯砲列に出会う。その店主の呼び声、表情、仕草などマチマチで慣れてくるとウルサイ、シツコイとは感じなくなる。何枚かこの様な店で買った事がある。
   ダルビッシュ有投手の父も神戸のペルシャ絨毯商である。またラスール氏の弟ハミッド エスハーギ氏も大阪市阿倍野区にパジリクという店を出しているので、お互いにビジネス上親交が深い。弟を通じて私はダルビッシュ投手の父から日本ハムの野球招待券を札幌ームで頂き一緒に観戦した事があった。

超高級なペルシャ絨毯の基本構造

   世界の有名なアンテイーク ペルシャ絨毯を紹介した下記の古河電工ホームページを開いて、次のタイトルのレポートをご一読して頂くと主要な絨毯の仕様が理解されるでしょう。
『イラン病患者からのレポート第三話 京都祇園祭の山鉾に展示されるペルシャ絨毯』
   尚基本的な織構成やデザインは次のとおりである。
   織構成は次の図のペルシャ織とトルコ織の2通りである。
   両者の違いはパイルの縦糸に対する通し方にあり、イランでもトルコ式の織り方をする名高い絨毯制作地域、例えばクルド族の本拠地サナンダッジ市のセネー絨毯は有名である。
 
   
 ペルシャ式      トルコ式
 
  典型的なデザインとしては次の三通りのデザインを紹介しよう。

 
   メダリオンコーナーは絨毯の中央にどっしりと構えた太陽のような威厳に満ちたメダリオンを描き絨毯の四隅のコーナーにはメダリオンを崇めるデザインを描くのでメダリオンコーナーである。
   メダリオン絨毯は四隅のコーナーデザインがないものである。それがメダリオン絨毯である。
   ペルシャはイスラム教シーア派であり、1日5回の礼拝規範があり、祈祷用絨毯にはメッカの方角に向かってお祈りをするために絨毯に方位がデザインされている。それで山形の方位デザインが描かれている。
   実際の絨毯織部の装飾デザインには次のようなものが加えられる。
   左図の代表的なメダリオンコーナー絨毯には中央部のフィールドにサルトランジとかペンダントと呼ばれる装飾デザインがある。中央のフィールドを外側から主ボーダーで囲まれている。この主ボーダーにはカルトーチと呼ばれる装飾デザインが施されている。そしてこの主ボーダーを内側と外側からサブボーダーで囲んでいる。通常サブボーダーにも細かな花柄紋様の装飾デザインが加えられる。


   次にペルシャ絨毯で代表的な紋様を紹介しよう。
         
 パイナップルのボテ紋様  へラテ紋様  タランツーラ紋様      生命の樹
 
     
   星とバラの紋様 シャーアッバス
              紋様
 サフランと
    クロッカス紋様
   
 
   次に有名な絨毯製作市(赤字)の地図は次の通りである。(カシャーンも赤字です。)
 
            
   紹介順序が必ずしも商品価値の高い順序とは限らない。
   これから紹介する絨毯は購入順からではなくて、買値の高い順に記載したが、プロの鑑定によっては前後がひっくりかえる可能性があるだろう。
 1.スーフ織超高級カシャーン絨毯
(1) 製作年度 :20世紀初め
(2) ラッジ数 :60ラッジ(縦糸幅7cmあたり60個の結び目を織り込む)
(3) 素材 縦糸:シルク 横糸:シルク/金糸/コルクウール
(4) 織形式:ペルシアノット
(5) デザイン:カシャーン スーフ(モータシャム)。
(6) 製作工房:モータシャム MOHTASHAM
(7) 寸法:198cm x128cm 
  
購入の経緯

   この絨毯は2009年10月にイランを訪問してザンジャーンからタクテ ソレイマン(拝火教神殿遺跡),ハマダーン(エクバタナの遺跡)を回ってテヘランバザールでラスールから見せられた絨毯である。しかしこの絨毯はラスール氏のものではなく、売却依頼されていた。
   履歴は彼の話によると、この絨毯は100年程前に2枚1組(ペアー)で作られた。そしてロンドンの絨毯商が一枚を2百万ポンドで売却した。残りの一枚は北島さんがイランに来られる一ヶ月前にロンドンから持ち主へ返送られたそうである。
   兎に角一目見て,織構造が京都祇園祭のポロネーズ絨毯と同じラチャック織(スーフ織)が使われて、全体に自分の好きなベージュ系色調で奧ゆかしさを滲ませる色彩のグラデーションの変容、一見して現代品とは違ったデザイン、色彩の調和と格調の高い雰囲気に感動させられた。
   ラスールにチャンデ(いくら)と聞いたら、250万円と即答が返ってきた。
   一瞬サイズも小さいし今までで最高の金額だったので、流石に高いと思ったが、物の持っている静けさが値引き交渉の気を削がれてしまった。全面降伏である。
   同年9月眼科で右の目が黄斑変性症で回復不可能と診断され,帰国後にトヨタの自家用車を売却する予定でいた。金策は何とかなると即断して失明記念に買い込むことにした。
   このような古美術を外国人が持ち出すのは空港検閲で引っ掛かり持ち出し出来ない。それでラスールの弟の神戸店へ送る市販絨毯の混載にして頂いた。
   現物が到着したので車売却190万円と残り60万円を30万円の分割で支払った。
   仕様の詳細はラスール氏の英語力では難しく、彼の商売仲間の同志社大学卒で日本語堪能なヤグマイ べザードさん(yaghmaie behzad) [yaghmajp@yahoo.co.jp]に調査依頼したら以下の内容の返答メールが届いた。

   送信日時: 2009年12月15日火曜日 22:01
   宛先: Susumu Kitajima
   件名: カシャーン絨毯履歴
   おはようございます。
   いつもお世話になります。昨日直接カシャーン絨毯を売った方
   と話しました。限られた情報ですが、履歴ご報告します。

   最初は工房者(モータシャム)が自らこの絨毯をデザインし約2
   年間かけて作ったそうです。人数はわかりません。    
   この絨毯を必ず鉄、アルミなどから出来た額に保管して頂との
   進めです。木材の額は絶対に保管しないでください。アンティ
   ークな絨毯に湿った空気、蒸し暑い気候はよくないそうです。
   又100%天然色を使用していますので、洗うのをおやめください。
   どうしても洗う必要があれば専門家とご相談ください。
   またご質問がございましたら後ほど聞きますが、彼自身もあん
   まり性格な情報がないと私の認識です。
   宜しくお願いします。
   ヤグマイ


   差出人: yaghmaie behzad [yaghmajp@yahoo.co.jp]
   送信日時: 2009年12月17日木曜日 17:47
   宛先: Susumu Kitajima
   件名: Re: カシャーン絨毯履歴
   北島様
   こんにちは。説明不足ですみません。
   ところで、も一枚のカシャーン絨毯がロンドンでは2百万ポンド
   で売れました。2万ポンドではございません。
   誤解しないように2百万ポンドで売れたそうです。
   来年上野博物館で日本ペルシャ絨毯協会がシルクのアンテーク
   絨毯の展示会ご成功されるように希望しています。
   奥様にも宜しくお伝えくださいませ。
   ヤグマイ


   さてロンドンでの売却値段が2百万ポンドだとすると2009年11月の平均ポンド円は145円であり、この絨毯の売値は何と2億9,000万円となり信じ難いレベルである。やはり2万ポンドが正しいのではないか。だとすると290万円で妥当なレベルである。
   ここで注目したい箇所はデザインで浮彫(スーフ)と書かれている。
   普通の絨毯は縦横糸が綿やウールで、パイルは毛、絹である。
   しかしこの絨毯には祇園祭のポロネーズと呼ばれた高級絨毯で使われたスーフ(ラチャック)織が使われている。この織り構造は文様の輪郭を際立たせるために文様の境界で、パイルを使わない縦糸、横糸だけの平織りの領域を設けて輪郭を浮き彫りにして際立たせるのである。これは超高級絨毯にしか使われない手法でラチャック織りまたはスーフと呼ばれている。
      
        
保証書

   この製品は2010年4月横浜のシルク博物館で開催された『ペルシャシルク絨毯の世界』に展示された際に主催者のペルシャ手織りカーペット協同組合が製品鑑定を実施した。其の保証書が右のとおりである。 
  
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2.狩猟絨毯
(1)   購入時期:1999年8月
(2)   製作年代:19世紀中期
(3)   製作地:イスファハン
(4)   寸法:1.85x2.5m
(5)   染料:天然染料
(6)   織り耳:丸
(7)   横糸本数:2本 硬め
(8)   結び方:ペルシャ
(9)   縦糸:絹
(10) 横糸:絹
(11) パイル:毛と絹
(12) ノット数:70 ラッジ

購入の経緯

   この絨毯は1970年代の半ばからイラン革命が成就するまで、日本電気株式会社がイラン無線電話回線網のプロジェクトを受注した際、コンサルタント会社NTC(NEC下請け会社)のテヘラン事務所長として活躍した故潮田巌氏から200万円で買い入れたものである。
   彼が買った経緯は17年間子供3人、奥さんと5人でテヘランに生活していた関係で仕事やお付き合いの人々にオミヤゲに絨毯を買う機会が多かった。その間親しく付き合っていた絨毯商に別れの挨拶をしたとき、この絨毯は100年以上昔の作品で、裏側にイラン絨毯協会の認定証が付いているのはプレミヤムがある価値の高い製品だから、記念に持ち帰ったら如何ですかと言われて買ったそうである。
   革命直後はアンティークなどの持ち出しが禁止されており、1982年ごろでも空港で荷物を開かされ、絨毯を見つけると銃を持った革命防衛隊の連中が細かくチェックして、専門家と相談して許可を出していた。
   潮田氏は家族の家財道具をコンテナーで輸送したので、この絨毯をなべ、釜、食器の下に敷いて隠したそうである。その後辻堂の彼の和室に敷いていたが、もし売り払う時には最初に私に相談してくれ、今なら50万円で買いたいと言ったが相手にされなかった。1999年ごろ彼はプラチナや金の商品相場の売買でかなり痛手を蒙った時に、売却をしたいが幾らで買うか?と聞いてきた。50万円から始めたが300万と言って来た。女房には市場の価格で750万円はすると言ったそうだ。今まで一番高いものでも150万円までなので、実際の市場の値段はまったく判らないし、『何でも鑑定団』にでも相談したいが当時はそんなテレビ番組もなかったので、200万円でどうかと言ったら、了承したので買った。彼の話ではイラン大使館の廊下にこの同じデザインのアンテイーク絨毯が飾られているそうである。

デザイン

   このデザインは英国の馬上から騎手がボールをステッキで打ちながらゴールに入れるクリケットの起源になったことから、クリケットデザインとか狩猟デザインとか呼ばれている。
   新物は沢山出回っているが、最も異なる点は騎手の帽子、服装、馬の飾りなどのデザインと色彩が全部異なるし、各部分に異なった文様が施されている。ところが新物の騎手の帽子、服装また馬の馬具なども1色で描かれており、それらの中には文様が一切描かれていない。
   主ボーダーのコーナーにはナツメ椰子のような木の下にライオンが描かれている。
   フィールドやボーダーに描かれた羊、ウサギ、ジャッカルなどの姿、表情が実に素朴で、ユーモラスな表現は狩猟をする側もされる側も楽しそうに描かれている。これはこの時代の作者たちの感性の余裕から来ているのであろう。

 
          
   
                             
            
コーナーのライオン                                        ボーダーの鹿と文様

狩猟絨毯の希少性の証

   この絨毯のアンテークを示す証は絨毯の裏に貼っている布製の銘板であると潮田氏もイラン商人も述べている。この銘板は誠に不鮮明でしかもファルシイ(イラン語)で書かれて読めない。
   右のライオンと刀剣のペルシャ国旗は1797年から1848年間のカジャール王朝時代のものである。
                   
   潮田さんが帰国した1987年から100年ほど前に造られた絨毯だとすると年譜的には大きな差異は感じられない。このアンティーク絨毯を売った店主の言葉は信用出来るのではないか。旗のライオンの背のデザインの違いはイラン絨毯協会の旗と国旗の違いだろう。  
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3.サデック セーラフィアン絨毯 

(1)   購入時期:2007年9月
(2)   製作年代:20世紀初期
(3)   製作地:イスファハン
(4)   寸法:1.85x2.5m
(5)   染料:天然染料
(6)   織り耳:丸
(7)   横糸本数:2本 硬め
(8)   結び方:ペルシャ
(9)   縦糸:絹
(10) 横糸:絹
(11) パイル:コルクウール
(12) ノット数:70 ラッジ

購入の経緯

   ラスール氏が自分の事務所の二階にある絨毯商に案内してくれた。この絨毯商はイラン絨毯界で、或いは世界で最も名を知られたイスファハンの絨毯工房の作品を取り扱っている専門店だった。
   其の工房をセーラフィアンという。それまで周りの店でいろいろなものを見せられたが、カシャーンの青白色のダブバリーデザインやビジャールのメダリオンなどいずれも古い入手困難なものを検討の対象にしていたが、セーラフィアンの格調と完成度の高い作品を見て、工芸品としての最高の品質を実現した都市型工房の作品をコレクションに加えることで、ペルシャ絨毯の製作過程の多様さが理解されると思って、高価であるが買うことに決めた。問題はこの種の作品には贋作が多く、判別が非常に難しい。無論僕には不可能で、アガエ(イラン語でMr.) ラスールと同志社大学卒業した彼の友人のアガエ ヤグマイ ベザートが事務所に持ち込んだこの絨毯をいろいろ検証した。
   まずラスールが織りの間違いを探し始めた。何も見つからなかった。
   次に縦軸と横軸でメダリオンの中心位置が何ミリずれているかを測ったら、共に2ミリ以内だった。その他図案のゆがみ、色のむら、線のゆがみ、セーラフィアン銘の入れ方など調べたが本物だろうという判定をした。問題は値段だが、最初に店で聞いたときは15,000ドルだと言っていた。このサイズで材質がコルクウール(子羊の首回りの柔らかい毛)なら、かなり高価だと思ったがセーラフィアン絨毯がこの値段で買えるとは思っていなかったので意外に安いと思った。
   店では贋作ではないとセーラフィアン家で発行している製品取り扱い許可書のような保証書を見せてくれた。ラスールの目の前で値段を出しているので、いい加減なものではないと思った。

デザイン

   エスレミ メダリオン コーナーデザインである。イスファハンの典型的なデザインである。
   フィールドのエスレミは日本人の風呂敷に描かれた唐草文様のオリジナルである。
   このデザイン絨毯ではフィールドがエンジ色やペルシャンブルーが有名であるが日本人好みのベージュも人気が高い。セーラフィアンの作品は高く売れるので、贋作が非常に多い。そのためサインの入れ方に工夫がなされ、且つ保証書を発行している。
   最近ではこの絨毯のように絨毯の幅いっぱいに特殊な文様を織り込み、その中央に銘を入れて、左右両端には丸で囲った“S”字マークを織り込んでいる。
   2007年12月30日にイスファハンのセーラフィアン工房から直接保証書が国際便で送られていた。
                           
       
 サデック セーラフィアン銘                
                
       
 保証書


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4.エラミ工房シルク 絨毯
(1)   購入時期:1995年8月
(2)   製作年代:20世紀中期
(3)  製作地:コム
(4)   寸法:2.0x3.0m
(5)   染料:天然染料
(6)   織り耳:丸
(7)   横糸本数:2本 硬め
(8)   結び方:ペルシャ
(9)   縦糸:絹
(10) 横糸:絹
(11) パイル:絹
(12) ノット数:70 ラッジ

購入の経緯

   この絨毯は第二期工事テヘランータブリーツ送電線工事の際に下請け会社社長メデカルチ氏が親の絨毯店を引き継いで、アフリカ アベニュ メイヤー通りの店で一目ぼれした絨毯である。
   コムのデザイナー ホセイン エラミ氏の作品で、惚れた理由はコーカサス調の幾何学文様を取り入れているが、蛇、羊、鳥、ライオンなどを子供の童話に出てくるような可愛らしい形に単純化して、デホルメされたデザインがフィールド全面に小さく配置され、その間隙をシャーアッバス文や幾何学的に整えた小さな花が鈴なりに着いている小枝で埋め尽くす、コーカサス絨毯とは違った華やかさと遊びの趣がエラミの明るい色彩と配色の組み合わせで独特な雰囲気を醸し出す。彼はエンジ系とブルー系の2作を発表しているが、これはエンジ系である。
   現地で製品を見たが購入しなかったが、どうしても忘れられず、工事の下請け会社社長タギザデ氏が残務整理の交渉で、来日する際に持参を要請した。
   支払いはドルで、幸い1ドル95円と近年でも最も円高だったので、15,000ドルでも支払いは約140万円で済んだ。
 添付写真はクム市バザールのエラミ氏(右)の倉庫にて

デザイン

   メダリオンが二重になって、外側の大きな方は地色が鮮やかなエンジですが、その外回りのフィールドはイランでは珍しい青白色である。
   この辺のデザインになると複雑で且つ筆者の言葉のボキャブラリーではどうにも表現できないので、じっくりと絨毯を見つめて欲しい。
 
 

   
  フィールド                              メダリオン                               コーナー
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 続く