大平 裕氏著、「卑弥呼以前の倭国500年」(PHP新書、860円)を読んで
山東 武美  
大平 裕さん(あかがね会会員)の最新の著書、「卑弥呼以前の倭国500年」を読む機会が,たまたまあり大変感銘を受けたので以下ご紹介かたがた感想を記します。
なお、大平 裕さんは、最近の10年ほどの間に、同じく古代史に関して下記の7冊の著作を刊行しておられます。

日本古代史正解(講談社)
日本古代史正解 纒向時代編( 同上 )
日本古代史正解 渡海編 ( 同上 )
知っていますか、任那日本府 (PHP研究所)
天照大神は卑弥呼だった ( 同上 )
暦で読み解く古代天皇の謎 (PHP文庫)
任那から読み解く古代史 ( 同上 )

この中の「日本古代史正解」 は、平成21年にあかがね会ホームページにも紹介されていますので、あるいは読まれた方も居られるかもしれません。
いずれにしても、最近の約10年ほどの間に、古代史というきわめて一般にはなじみの薄い、専門性の高い分野で、これだけの書物を刊行しておられるというのは、大変な労力で、今般、小生がたまたま読む機会を得たのはこの7冊に続く最新刊、「卑弥呼以前の倭国500年」であります。これについての感想を以下述べさせて頂きます。

正直、小生は古代史は全くの門外漢でありますので、難解なところも多く、読むにはかなり苦労しましたが、それでも、3回ほど読み直すうちに著者の言わんとするところはほぼ理解出来たつもりです。
はっきり言って、この本は一市井人が、興味本位、趣味が高じた程度で書けるものではありません。
専門家、学者の評価は知りませんが、これは非常にレベルの高い専門書、学術書であります。長年、古代史を研究するうちに感じた種々の疑問、矛盾についてご自分なりの結論を出し、それを既存の学者に問いただすものでもあります。
我国の弥生時代は、従来、考えておられるよりもかなり遡るのではないか、稲作も同様に現状の認識よりもかなり古くから行われ始めたのではないか(紀元前1000年くらいまでさかのぼる)、当然、それらは大陸から渡来したものであるから大陸との往来は想像以上に古くからあったであろう。これらのことは、わが国にはまだ文字のない時代なので、大陸に残る文献やら、わが国においての青銅器などの出土物の年代などによって推測し得る。

邪馬台国の読み方、その場所についても、大平さんは「やまとのくに」と読み、そのありし場所は九州ではなく、大和だと主張する。古墳時代以前からの各地方の豪族を征服して大和に倭国の王が生まれて行く過程や大陸に残る文献を読んでも、「やまたいこく」ではなく 「やまとのくに」であり、場所は九州ではなく大和地方だという説明は自然である。この件に関しては、大平さんは、既存の学者の一部の方々と相いれないところがあるようです。

卑弥呼が倭国の王になる過程の説明もきわめて自然である。そして、大平さんは、卑弥呼が天照大神ではないか、と推測しておられる。
これらは、日本の古代史においても、今なお重要なるテーマだと思いますが、この大平さんの投じた一石がどのように波紋をひろげて行くのか、興味のあるところです。
いずれにしても、大変な労作、しかもきわめて専門性の高い、いや、古代史の専門書といってもいいほどの著作であります。難解なる部分も多くありますが、それでもいく度となく読みかえして理解しようとしてしまうのは、やはり我が国、いや自分達のルーツにかかわることだからでしょうか。
学生時代も、古河電工在社中も、古代史とは全く関係ないところで過ごされて、今、このように古代史に関する著作を8冊も、ものにされるというのには驚きを禁じ得ません。今後も、ますます、古代史の研究に励まれて、古代史の学会に、一市井人として、問題をアピールし続けて頂ければ、と大いに期待します。

さて、ここからは、大平さんとは関係なく、小生の古代史に関する疑問であります。以下、どなたか、小生の古代史に関する疑問に、解答を下さる方はおられませんでしょうか?

戦前、小学校に通った方なら覚えていませんか? 「・・・紀元2600年・・・」という歌詞の一節を軍歌などと一緒によく歌いましたよね。
小生は、終戦時、小学校3年生だったのでよく覚えております。つまり、日本の年号は西暦よりも600年ほどさかのぼる、ということです。
実際、宮内庁のホームページで天皇家の系図を見ると、初代天皇である神武天皇は、西暦元年からさかのぼること660年の時代になっております。天照大神はさらにその数代前にさかのぼります。


一方、学問上、古代史の年表では、天照大神ではないかとされる卑弥呼は西暦190年~250年、やまとのくにがほぼわが国を統一したのが西暦200年頃、大和朝廷が出来たのが西暦250年ころ、初代天皇の神武天皇が西暦250年となっております。
確かに、漢字の伝来が西暦250年頃とされ、それまでは文字がなかった訳ですから、西暦200~300年ころまでは、史実がはっきりしていないことが多く、神話の世界も多々あると思います。
しかし、天皇家の系図も、古事記、日本書紀などの記録によるものでしょうし、いくら神話の世界とはいえ、初代天皇とされる神武天皇の時代が片や西暦250年、片や西暦元年をさかのぼること660年、あわせると900年ほどの差があるということは、どういうことなのでしようか?
この件に関しては、大平さんの著書 「暦で読み解く古代天皇の謎」 の中にも記述があるように思われますので、早速買い求めて読んでみたいと思います。また、小生の故郷、三重県にある伊勢神宮(天照大神を祭っている)のおひざもとにある皇學館大学に親しい知人がおりますので、教えを請うてみたいと思います。

来年は平成から年号が変わります。カレンダー業界とか、関連する業界は、新しい年号が直前まで判らないので、対応に苦慮しているようです。そこで通りっこない勝手な提案、年号は西暦いっぽんに統一する、若しくは日本固有のものということに固執するならば紀元2700年とかにする、というのは如何でしょうか?
これはボツ、ですね。

以上