第442回講演会の予定

日時: 2017年2月13日(月) 13001500
演題: 武蔵野東学園物語 ~日光電気精銅所に芽生えた心の教育者・北原キヨ~

講師: 学校法人 武蔵野東学園 理事長 寺田 欣司 氏

「武蔵野東学園」は、自閉症児教育のための「生活療法」と、健常児と自閉症児を同じキャンパスで教育する「混合教育」というユニークな教育法を実践し、世界的に注目を集めている。

この学園の創立者・北原キヨは大正14年(1925年)に古河電工・日光電気精銅所の検査技師永長念吉の三女として生まれた。キヨは精銅所付属幼稚園から日光第二尋常小学校に進み在学中には神童とうたわれた。小学校卒業と同時に精銅所に勤めたが、キヨの才を高く評価する同小学校の星野理一郎校長は、キヨを小学校の職員に採用して直接指導、教員検定試験に挑戦させた。そしてキヨは国民学校教員免許を取得、県下屈指の名門小学校である母校の教壇に立つこととなった。このときキヨ16歳、日本最年少の小学校教師の誕生である。キヨの生涯の教育哲学は、星野校長の教え「教育方法は子供から学ぶもの」「子供は教師の後ろ姿に学ぶ」である。

終戦後キヨは昭和26年(1951年)家族と共に武蔵野市に移り、立川市の小学校の教員として勤務の傍ら、明治大学の夜間部で学び、中高の教職資格を得る。その後、キヨは武蔵野市の中小企業「光合金鋳造所」の経営者・北原勝平と結婚し北原姓となり、昭和39年(1964年)同社の工場移転跡地・建屋で「武蔵野東幼稚園」を設立し、翌年4月に開園する。

キヨは幼稚園開園当初、どの幼稚園でも入園を断られた5人の障害児(全員自閉症児だった)の入園を快く引き受けて彼らの教育に当たった。北原キヨの教師としての信念は「どんな子でも私は教育する」である。それが後の「混合教育」「生活療法」へ発展する原点となった。

昭和52年(1977年)には世界に例のない混合教育校として「武蔵野東小学校」を開校、さらに武蔵野東中学校、続いて昭和61年(1986年)には自閉児の社会自立教育を目的とする「武蔵野東技能高等専修学校」(現名称武蔵野東高等専修学校)を開校する。また同学園は昭和59(1984)に外国人自閉児を受け入れる「国際学級」を新設したが、国際学級在籍のアメリカの保護者を中心とした人々の熱望を受け、昭和62(1987)には米国マサチューセッツ州に「ボストン東スクール」を開校、自閉症児教育の分野で国際的にも大きな影響を与えた。

視覚障害者が鋭敏な聴覚や触覚を持っているように、コミュニケーション能力に障害を持つ自閉症児(者)の中には、一般人にはなかなか見当らない特異な能力を発揮する人々がいる。武蔵野東学園の使命は、そうした彼らの能力を伸ばし、それを生かすことができる場を開拓して社会自立させる、これが寺田理事長の信念である。

自閉症の一態様である「アスペルガー症候群」の障害を持つ人々の中には、ニュートン、アインシュタイン、ビル・ゲイツ、スピールバーグなど人類の科学・文化の発展の歴史に名を刻む、驚くべき能力を持った人たちがいる。自閉児を授かったことで、その純粋な心に触れて人間的に成長できたという親もいる。自閉症者が職場に参加することで、社員が明るくなり、積極的に仕事に取り組むようになったという企業もある。自閉症児(者)は社会から疎外されている人々ではない。

また武蔵野東学園が行う「混合教育」は、健常児たちにとっては他者に対する思いやりの心を育み、社会的弱者に支援の手を差し伸べる生活習慣を身につける、「心の教育」として、インクルーシブ教育の推進を目指す国を始め、広く教育界において注目の的となっている。

この講演の講師・寺田欣司氏は昭和62年に北原キヨと出会い、同女史の教育観に共鳴し、その招きに応じて子女二人を同学園に入学させた。それが機縁となって平成8年(1996年)に同学園の監事、平成15年(2003年)には理事長に就任する。寺田氏は銀行マン、経営コンサルタントの経歴・知識を活かして学園の経営の健全な発展に尽力する。氏はこの講演で、学園創立者北原キヨをはじめとする、情熱と愛情にあふれた「心の教育者」の群像の物語を、そして未だに残る障害児(者)への社会的偏見、誤解を払拭する一助となることを期待しつつ、熱く語る。

講師紹介: 寺田欣司(てらだ・きんじ)氏

1944年(昭和19年) 静岡県磐田市生まれ

1967年(昭和42年) 東京大学法学部卒業

1967年(昭和42年) 三和銀行入行

1987年(昭和62年) 三和銀行吉祥寺支店長

1991年(平成  3年) 三和総合研究所取締役理事

1998年(平成10年) 富士通総研取締役研究主幹

2003年(平成15年) 武蔵野東学園理事長

主な著書: 「ビジネスマンの知の技術 三部作」(オーエス出版)、「武蔵野東学園物語」(大進堂)、「支店長が読む銀行業務改善隻語」(近代セールス社)、「銀行窓口の向こう側」(扶桑社)、「銀行員という職業」(同上)、「クリティカルシンキングの技術」(オーエス出版社)、「とことんやさしい法律の本」(日刊工業社)、「部下を活かす支店長」(近代セールス)ほか共著を含め多数。

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