タグチメソッドで環境問題を解く
-効果的な環境配慮型の開発・設計

  
   地球規模での喫緊の課題である環境問題に対して、タグチメ  ソッドを最大限に活用することを提案しています。環境問題  に焦点を当て、タグチメソッドの有用性と考え方、モノづく りを対象とするパラメータ設計とその成功事例を示し、さら に新しい認識・予測の技術としてMTシステムとその成功事例 も紹介しています。再生可能エネルギーとして風力発電への アプローチも取り上げています。

 

 

推薦の言葉

環境とエネルギーの問題は21世紀の大きな課題のひとつであることに異論はないであろう。世界的な人口の増大に伴って、人類はエネルギー資源の逼迫と地球温暖化など環境問題に直面しているのが現実である。特に、日本においては2011311日の東日本大震災と、これに伴う福島原子力発電所の事故を契機に、再生可能エネルギーの積極的な導入促進が強く求められている。これに対する積極的な答えを出すことが、技術立国日本の世界に対する責務といえよう。本書は、この重要な課題を解決する有用な手段として、日本発の「新しい知恵」である、タグチメソッド(TM)を提案するものである。

私自身は専門分野が異なることから、タグチメソッドについては、日本発の世界的に通用する品質工学の考え方で、提唱者の田口玄一先生は、本田宗一郎氏、豊田英二氏についで日本人で3人目に米国の自動車殿堂入りされた雲の上の人、という程度の認識であった。

 しかし、本書の原稿を読ませていただき、著者の長谷川良子さんと論議を重ねるうちに、私の専門とする風力発電の分野はもちろんのこと、環境関連に対する技術開発の効率化、製造・設備監視の効率化、さらには予測技術の高度化に有効活用できることを強く認識するに至った。このように、TMは、様々な技術的課題の解決に有効な手段というレベルではなく、むしろ技術開発の哲学ともいえるのではないかと考えている。

著者の長谷川良子博士は、長年にわたって田口玄一博士の薫陶を受け、その考えを吸収し、実践してこられた。製造会社に勤務するかたわら、大学でもタグチメソッドを指導してきた経験をお持ちである。

筆者も、エネルギー・環境関連の書籍をかなり読んできたが、本書のように具体的な解決の手法を提示している本はあまり見当たらないようである。しかも、女性研究者ならではの柔軟で冷静な視点から、わかりやすく記述され、章の末尾には本文中で使われている数式の説明や興味深いエピソードを記したコラムを設けて理解の助けとするなどの特徴もある。本書は構想段階から時間をかけ検討し、練りに練った内容であることから、本来は難しい内容がいつの間にか理解できるように工夫されている。

 このように本書は幅広い工学分野を扱っており、日本の誇りであるタグチメソッドを知らない技術者や研究者には本書を通してぜひその有用性を知っていただき、読者自身の課題解決にも役立たせていただきたいと願っている。また、初めて本書を手にする方には、具体的な事例と共にタグチメソッドを理解できるTMの入門書としても役立つものと思う。このように、特に若い方々が、本書を通して日本の誇りであるタグチメソッドを学んで、ものつくり日本を支えていただきたいと祈念して、本書を強く推薦したい。

                            足利工業大学 学長
                                                                 牛山 泉