「敗戦の克服」概要紹介


20153月、ドイツのメルケル首相が来日し、「日本も、周辺の国にきちんと謝っているドイツに倣うべきだ」と受け取れるような発言をした。これに対し、中国、韓国は兎も角、欧米でも、彼女の発言を引いて、日本は謝罪が足りないとする報道が少なからずあった。両国とも、70年に亘って「敗戦の克服」のために努力を続けてきたことに間違いないのに、なぜこのように、評価が分かれるのかとの疑問をもった。

 そこで、「敗戦の克服」に成功した2つの「国家経営」事例の比較分析を試みた。敗戦後の両国が共通に体験した事件、降伏、軍事裁判、新憲法制定、領土問題、再軍備、和解外交の6つを取り上げ、置かれた状況と対応策の違いを、簡単なモデルを念頭に、実務家の立場から分析した。その結果、「両国の背負わされた罪の質的違い、占領方式と占領政策の違いが、両国の国民性の違いと相俟って、夫々の局面での政治的対応の違いを生じ、その積み重ねが、現在の国家体質の違いを生むことになった。謝罪に関する国際評価の違いは、その1つの表れである」という、経営実務に照らせば、至極常識的な結論に至った。