「柿くへば・・・」
谷口　啓治
今年はなにかにつけて荒っぽい。 天災、獣災そして人災と留まるところを知らず、哀しさや悔しさを通り越して半ばあきれ果てている。 広島県の豪雨被害が喉元過ぎぬうちに、御嶽山の大騒ぎである。 我が農園のハクビシン被害や、茫々たる雑草に悩まされた事など、小さい小さい！ 海を越えれば、「イスラム国」とやらの跳梁が悩ましいほか、エボラ出血熱やデング熱など、話題に事欠かない。 　筆者の好む大相撲ではひいきの「ある大関」が振るわず、プロ野球では「虎」がやっとこサCSに滑り込んだだけ、とあっては一向に気勢があがらない毎日で、医者と淀君の目を盗んで“ウンマクない”酒を煽っている毎日である。 　脱線脱線！ さて、600戸を超える大集団になった我が住宅団地にも、何処からともなく金木犀の香りがきこえる頃になった。 と、或るお宅の庭に柿が鈴なりになっている様子を見つけた。（甘いのかなァ、渋柿だろうかな）と、思いつつ数日 通り過ぎたが、念願かなって、一昨日に奥様らしい方に「綺麗ですねー、甘ですか・渋ですか」と声をお掛けするチャンスを得て、遠慮はしたが枝もろとも折ってくださった（写真１）。 直径5〜6cm.ほどの小粒ながら、甘みは充分、淀君とともにいただいた。
写真　１；　ご近所からいただいた柿
「柿くへば・・・」 　筆者の二回り上の母が、実家の離れの裏の小さな木になっている柿の、ヤット赤みがかってきた小さい実の皮をむいてくれたものである。 社会人になってからは、一番濃密に接することが出来た昭和58〜64年（平成元年）の頃のことで、筆者が本家を追われて大阪、愛知の子会社に勤めていて、実家に近く休日を利用して立ち寄ることが多かったからである。 少し甘みが増してきた柿を口にしながら、小田舎のことで、おやつ代わりなのだろうと思っていたが、母が平成6年2月83歳直前で亡くなったあと、明治女の耐乏生活の知恵であった事を知り臍を食む思いであった。 話は変わるが、筆者らが関西から栃木に来たころ、甘柿の南限は小山、と聞いていた。今は、リンゴの北限は小山であり変わったものである。
平成14年10月3日