「一定のめどが・・・」
谷口　啓治
姦しい、と思う。「マニフェスト」に明けて「工程表」で終わったかに見えたが、今度は“めど”が登場してきた。目途、目処、目当そして目止とも書くのかどうか、浅学にして不明である。　筆者の経験上、愛知県にある（当時の）子会社で、再建のめどが立って創業者一家から預かっていた預託金をお返しするか否かの判断に苦しんだことがあった。梃子入れのために奮闘された前任の社長からは、「社業が再建できるまでお預かりする」と聞かされたように思っていたが、社業の再建とは何を指すのか、累積損の解消か？配当の再開か？分らないまま日を過ごしていた。途中で、創業者から「アノ金の一部を返して欲しい」との申し出を受けたのである。　大かたは復配直前まで立ち直っていたが、脆弱な経営体質を継続的に強固にするには油断が出来なかった。色々話をして申し出を撤回してもらったが、内心「この鬼め！」と思われていたかも知れないが、退任直前に分割返済を開始するまで辛抱してもらった。　もう一つはエナメル線工場をアルミ材料の加工工場にリストラした東北地方の子会社でのこと。幸いにも三年目に採算が採れるようになって、その年の暮に、日頃低額の給料に甘んじて頑張ってくれている人達に、せめて一人一万円の特別ボーナスを別袋で出す事を提案した。同じく出向されていた先輩社長の説得に二日も掛かったのが忘れられないが、その年末に退社するように言われていた筆者は“最後の従業員孝行”と思って意思を通させて貰った。この時は、「（リストラ成功の）めどが立った時には、皆で美酒を飲もう」と言う主旨の新会社発足時の社長訓示に殉じたつもりであった。何時もは朝礼で公表するのであるが、この時は何故か黙っていた。そして潔く退社したのである。ボーナスの支給日は、その後であったので皆の喜んで？呉れた顔を見ることが出来なかった。（後日再会した職場長に聞いたが、「何にも（貰わなかった）！」とのことで愕然とした）。　新聞やTVの報道によると、どこかの国の元首たちも“めど”論議を楽しんでいるようだが、日本語って難しいですネ　と思う。　注；最初の例の子会社では、役員にはナシで一人二万円の臨時ボーナスを支給したことがある。　　　　　　　　　（台風２号で壊れたトマトハウスのフレームを大幅に直した後の休憩中に記した）
６月３日昼