続・長崎小旅行
谷口　啓治
５月２０日午前８時頃の「ひかり号」に乗った。案外売れ行きが良いと見えて、カミサンとは少し離れた“指定席”であるが三人掛けの中央で、肩身が狭い思いを　又させられた。　朝からビールと言う訳には参らず、珍しく神妙にしていたが、車窓の景色が当に“走馬灯”であり　若かりし頃の思い出に耽ることと相成った次第。全部について述べると枚挙に暇がないので、大幅に飛ばして“思い出”を記してみよう。　三島を通過。右手に「東レ・三島」が見える。昭和３０年代の後半、化繊が全盛を極める頃だったと思うが、小山の管棒工場からは沢山のボビン（糸巻き用の直管のアルミ芯金）が出荷されていた。たかが糸巻きと言うなかれ、超高速で回転しながら化学繊維の糸を巻き取る、そんなときに表面傷や偏肉によるアンバランス回転があろうものなら、糸が切れるとかという問題に直結（筆者の推定）する、そんなことがあったのかどうか、故・叶秀作氏が担当係長として渋々出張されていた事を思い出した。　静岡では、積水化成の化粧板を抑えるダイカスト鋳物にクロームメッキを施したモールの取り付けが上手く行かないという電気冷蔵庫メーカーの問題提起で、出張させられたりした（詳細についての記憶が無い）。豊橋に東芝機械㈱の工場があり、主に工作機械やダイカスト鋳造機を作っていた（る？）が、金型（鉄鋼製の鋳型～ダイス）の製作も頼んでいて、新機軸のダイス（３枚ダイス・注）の設計をして製作してもらった時には、アラオ（荒尾）さんと言う技師に色々と教わって勉強になった。　　　注；　鋳型とかダイスは、上型（可動側）と下型（固定側）の二枚で構成されているが、横型ダイカスト機で丸い鋳物の中心からメタルを注入するために中間に三枚目の、　　　　　　いわば“捨て型”を挟む方式を設計した。　名古屋では、何んといっても山田軽金属製作所でお世話になったことが思い出に残っている（既稿・「福は内」に述べた）が、同地の換気扇メーカーに日光工場の納期遅れ対応品としてS軽金属の角板を持ち込み、サークルシャーで円板（本来品）に加工させられた時は大変だった。日光時代に、製造課長として現場作業を見ていたが・・・。　また、山軽の重要得意先であった富士電機・四日市にクルマで出張して、東名阪高速道で覆面パトに捕らえられた事。　名古屋郊外に稲沢市と言う、植え木で名高い町がある。名古屋駅を出て右手に大きなビール工場や清州城があり、これを過ぎると、平野の中に高いエレベーターの試験塔が見えてくるが、これぞM電機の昇降機工場である。やはり昭和３０年代の後半、東洋オーチス（OTIS）と言う会社から受注に成功したエスカレーターの踏み板（注）に味をしめて、エスカの大手メーカーである同事業所に売り込みに出かけた。　注；既稿で白状しているが、この時OTIS向けの鋳型設計で筆者は大チョンボをやらかしている。　　　OTISは現在名を「日本オーチス・エレベーター工業」と呼ばれている。　　　筆者は若輩ゆえ、大沢英哉氏（当時、小山副工場長・故人）のカバン持ちでついて行った　　　のだが、仲介された地元の名士の伝手でM電機側は、副所長が出て来られた。　　　ひと通り話を聞かれた後に、「貴社には古鋳（古河鋳造・現在の古河アルフレックス）と言う　　　当該品を得意とするダイカストメーカーがあるが、同社との調整はされているか？！」と　　　聞かれた。購入者としては当然の質問であったが、「・・・」、返事が出来ずに引き下がった。　さて、いよいよ木曽三川（西に向かって、木曽・長良・揖斐の順）を渡る。　　ここで一服、　次なる機会にお楽しみを残しておくことにしたか　ったが、折しも台風２号が接近し、５月２９日は　雨、３０日から３１日午前中には強風が吹き荒れた。このお百姓は、心配で畑の見回りを数回した。３０日夕がたには、トマトハウスが北風を受けて東京寄りに傾いているのでロープと紐とで　那須の方へ引っ張り起こして置いた（写真１）。自慢のタマネギは、殆どが倒伏していて、（写真２）に８０株の畝を写したが　自然倒伏までには一週間以上早い。侭よとばかりに１０株ほどを臨時に収穫して、市内に住む娘宅に届けたが球根がそれなりの大きさに育っていて　極めて残念なり。
５月３１日夜　記す。