マチガイだらけの「火吹き竹」
佐藤 幸彦  
 テレビの時代劇や昔々人気のあった連ドラの「おしん」でも見られたが、竈に火を起こすのに、火吹き竹を口にあてて、ほっぺたをふくらまして吹いているのを見る。これでは火は起こらないのである。「そんなこと知っているよ」という向きはこの先を読まないで頂きたい。信州上田でこの問題を提起したところ、誰もが火吹き竹は先に節の部分があって、そこに小孔が明いているんだ。空気はそこで流速を上げて吹きつけるのだという。
 農村地帯でも今は火吹き竹と縁がないのであろう。私に火吹き竹のメトードを教えてくれたのは禅寺で修行した坊さんであった。
 火吹き竹は竹の節を抜いた、出来るだけなめらかな「ずんどう」のものを用いる。空気の流れの抵抗になるような物は一切無いのが良い。火を吹く時は、これを口から5cmぐらい離して吹く。「あたりまえだ」という方はこの先を読まなくても結構である。
 口を竹から離して竹の中に空気を吹き込むと、その気流は周辺の空気を巻き込んで、十分な風量となって出口に達するのである。
 そこで実験:紙を紙吹雪ぐらいの大きさに破って数片を机の上にでもバラ撒く。手頃な竹があれば良いが、賞状などを入れる紙筒の底を抜いたものでも火吹き竹のモデルに適当だろう。ついでに底に小穴を明けたものも用意すると良い。火吹き竹を口につけて吹いたり口から離して吹いて、紙吹雪を吹き散らしてみよう。きっと口を離すことの霊験に驚く人もあると思う。
 蛇足ながらほっぺたを膨らます効果は、精々、肺活量にほっぺたの容積が加わる程度であろうと思う。 
平成22年5月