原発再稼働:英会話教室でのディスカッション
川村 知一

はじめに
  以前この欄で紹介したように、私が通っている英会話教室のディスカッションクラスでは、毎回、興味ある英字ニュースのプリントが配布され、3から5人の生徒で50分間会話する。
  2カ月ほど前、まだ2基の原発が稼働していた時期、いずれ全原発が停止されることで、再稼働に関してディスカッションする機会があった。

タイトル ”Japan’s Nuclear Energy Industry Shuts Down” 
(原文は文末に添付:出典は ”The Japan Times“ ?)
Topic Questions には次のような問があった。(皆様のご意見は?)
1. Are you happy about Japan shutting down its nuclear reactors?
2. Do you think Japan can survive without restarting the nuclear power facilities?
3. Do you think this will make Japan more dependent on other countries?
4. Should the Japanese government do more to allay fears about nuclear accidents?

ジェネレーションギャップ
教師はオハイオ州から来た24才男性、生徒は私(70才)と20才代から30才代の女性4人で、計5名であった。
外国人教師は、政治的なコメントは差し控えるよう教育されているので、ディスカッションは生徒5人で行われ、当然のことながら安全性に関する話題に集中した。私以外の5人は“オイルショック”未体験の若い世代であった。

化石燃料の代替エネルギー開発の必要性
  今日、日本はエネルギーの95%を輸入し、近年、中国やインドなど新興国における化石燃料消費が格段に増加して、価格が高止まりしている。
2050年には世界の人口が現在の70億人から100億人になるとされ、代替エネルギー開発は世界的な緊急課題である。
  現在、日本は資金力にモノを言わせて、世界中から天然ガスを高値で落札しているため価格が高騰し、貧しい国では入手困難になっていると聞く。

日本の原発は半世紀ほど前、貿易不均衡もあって米国から買わされた技術とも聞く。幸いオイルショック時に役立ち、国は原発比率を高める施策を進め、近年の化石燃料価格高騰でも貢献してきた。

仮に脱原発が必要になれば、さらなる代替エネルギー開発が必要になる。
  私の学生時代、将来のエネルギーとして、太陽と同じ原理の核融合が謳われていたが、当面あてにできそうにない。

追記:オイルショックの思い出
第一次オイルショック:
私は新婚で小山の社宅に入ったが、トイレットペーパーはなく、新規入居者にはプロパンガス屋が供給せず、500Wの電熱器と置コタツで冬を過ごした。(社宅地区には電電公社の回線が無く電話も無かった。)

第二次オイルショック:
ショックの余韻が残っていた昭和57年から7年間、アルミ日光工場の鋳造課長を担当した。6基の溶解炉があり月間平均15,000トンのアルミ原料を溶解していた。(金額ベースで45~60億円/月のアルミ原料を溶解していた。)

オイルショック前の原油価格はバレル2ドル程度であったが、第一次で10ドルに、第二次で30~40ドルになった。
アルミは電気エネルギーの塊で、オイル価格は地金価格に跳ね返り、トン15万円程度が30~40万円になった。
鋳造課長にとって熱効率向上とメタル酸化ロス低減が最重要課題であった。
排熱回収装置(レキペレータ)は既に設置されていて、溶解熱効率は35%→45%程度に改善されていた。

操炉方法で、さらに熱効率向上とメタルロス低減するには、炉内圧管理と酸素濃度管理が有効手段である。溶解炉の扉から漏れ出る炎を目視して、手動で煙突のダンパーを開閉調整して、さらに5%程度の熱効率向上を図った。
(福井工場の溶解炉では、炉内圧計と酸素濃度計をセンサーに、煙突ダンパーの開閉度合いが自動制御化された。)

補足:煙突高さとダンパーの役割概略
ゴミの焼却などでは高い煙突が有効で、煙突に燃焼ガスが強く引かれ、炉内に新鮮な空気が勢いよく吸い込まれる反面、余分な空気が流入すると炉内の熱を持ち去ってしまう。
金属の溶解の燃焼を適切にコントロールするために、煙突に開閉ダンパーを設置する。
ダンパーを閉めすぎると不完全燃焼になり黒煙を発し、COガスを発生する。

蛇足:
窯業で使用される“登り窯”は煙突効果を上手に利用したものであり、ヨーロッパのスキー場ケーブルカーのトンネル内火災は、煙突内の火災に等しく、悲惨な結果となった。
ホテルの暖房用ボイラー不完全燃焼により、多数の一酸化炭素中毒死亡事故があった。
趣味の陶芸家夫婦が自宅の窯で死亡した。いずれも煙突のダンパーが全閉であった、とあった。

添付
Japan’s Nuclear Energy Industry Shuts Down
All but two of Japan’s 54 commercial reactors have gone offline since the nuclear disaster a year ago, after the earthquake and tsunami, and it is not  clear when they can be restarted.
With the last operating reactor scheduled to be idled as soon as next month, Japan-once one of the world’s leaders in atomic energy-will have at least temporarily shut down an industry that once generated a third of its electricity.

With few alternatives, the prime minister, Yoshihiko Noda, has called for restarting the plants as soon as possible, saying he supports a gradual phase-out of nuclear power over several decades.
Yet, fearing public opposition, he has said he will not restart the reactors without the approval of local community leaders.

Japan has so far succeeded in avoiding shortages, thanks in part to a drastic conservation program that has involved turning off air-conditioning in summer and office lights during the day.
It has also increased generation from conventional plants that use more expensive natural gas and other fossil fuels in a nation already uneasy about its reliance on foreign sources of energy.

The loss of nuclear power has hurt in another way: economists blame the higher energy prices for causing Japan’s first annual trade deficit in more than three decades, which has weakened the yen and raised concerns about the future of the country’s export-driven economy.
Hoping to allay the safety concerns of local communities, the government has asked plant operators to conduct so-called stress tests.
But many local leaders say the stress tests are not enough, and want additional proof that the government has learned the lessons of the Fukushima accident.

 平成24年6月17日