タバコ700円騒動で思い出したアレコレ
川村 知一

はじめに
野田新内閣で、就任早々の小宮山洋子厚労大臣が、「タバコ700円」話を持ち出したところ各方面から雑音が入り尻すぼみ状態にある。
この話でタバコにまつわる記憶がアレコレ甦った。

[無料配布タバコ]
今から20年以上前、昼休みの丸の内を散歩していると、数人のキャンペンガールが新製品の5本入りタバコ1箱を通行人に配っていた。
非喫煙者の私もタダならもらっておこうと受け取り、家に持ち帰ってイタズラに2,3本吸って、残りは捨ててしまった。

1985年、シカゴで週末を過ごした時、同様な光景があり、こちらは気前よく20本入り1箱を配っていたので、上司のお土産にと、1箱もらってきた。
それから10年ほど経ち、家でラジオを聞いていたところ、米国のタバコ訴訟でタバコ会社が敗訴した話があった。
内容は、「無料配布タバコがもとで、ニコチン中毒になった、その無料タバコはニコチン含有を意図的に高くしてあり、知らずに喫煙した人がニコチン中毒になった」という恐るべき訴訟で、タバコメーカーも事実を認めた話であった。
(上司にあげてしまったが!?)

[米国タバコ輸入圧力から第三世界へ輸出]
1990年代、TIME紙の記事に、「米国のエリートビジネスマンは、容姿が重要で、整形手術をしたり、肥満を防ぐため牛肉を食べず、鶏肉をグリルで油を落として食べ、喫煙しない」とあり、米国では喫煙率が急激に低下した。

これまたラジオで、「米国のタバコ産業は余剰タバコに困り、捌け先として日本をターゲットに米国政府に働きかけ、日本政府に輸入圧力をかけさせた。その結果、日本たばこ産業は余剰タバコを第三世界に輸出する構図になった」と聞いた。

[インターネットで統計資料を確認]
話が定性的であったので、インターネットで定量的な内容を調べた。

(その1.米国余剰タバコに関連して)
日本における米国タバコの輸入は1986年(昭和61年)には99億本であったものが2002年に780億本と16年間で8倍近くに跳ね上がった。これは米国タバコ輸出の61%に相当した。

(その2.2009年米、英、日タバコ産業事業比較)


表1

  PM  BATS  JT
 売上高 3兆60億円  1兆8,897億円  6兆1,347億円 
 純利益 5,518億円  3,608億円  1,384億円 

備考:PM フィリップモリスインターナショナル
  BATS ブリティッシュアメリカンタバコ   
 JT 日本たばこ産業        
   *1ドル=86円、1英ポンド=133円で計算
 


★表1から、JTの売り上げはPMの2倍に達し、巨大産業に発展している。
JTの純利益がFMの1/4程度となっているが、会計上のカラクリと思われる。
JTは国内で医薬品、食糧・飲料メーカーを買収して事業を拡大している。海外では東欧などのタバコ事業拡大のため、英国の関連企業を大金で買収している。

(その3.PM、BATS、JTのシェア比較)
      グラフ1に比較を示す。


(その4.日本のタバコ消費本数推移)
   グラフ2に推移を示す。
 
(その5.各国の喫煙率比較)
   グラフ3に比較を示す。
 
 
[まとめ]
中学1年の家庭科の時間に、女性教師がタバコの害について話をしてくれた。
「肺の末端にある肺胞は酸素を血液に取込む機能があり、その表面積は60畳の広さがある。タバコを吸うと表面はヤニで真黒になり--」。
最近、COPD(慢性閉塞性肺疾患)という単語を頻繁に目にするようになった。
全国に14万人ほどの患者がいて、外出時には酸素発生器を携帯しなければならなく、大半がタバコによる後遺症とのこと。
タバコはCOPD以外にも肺がんなど多くの病気に関係し、医療費も膨大である。
健康保険料の赤字が大問題になっている現在、非喫煙者には迷惑な話でもあり、第三次補正予算がらみの増税で、タバコ税増税分については、厚労省に取り分をよこせ、という意図が小宮山発言に含まれているのであれば理解できよう。
 
平成23年9月25日