-
第 4 4 3 回 講 演 録

日時: 2016年12月02日(金)13:00~15:05

演題: 活発化する日本列島の火山
講師: 東京工業大学 理学院 火山流体研究センター 教授 小川 康雄 氏

はじめに

東工大の火山流体研究センターでは、草津白根火山を初めとして日本全国および海外の幾つかの活火山を研究対象として基礎研究を行っている。火山流体研究センターは、草津白根火山観測所における火山ガスや温泉水の化学的研究から発足した組織であるが、現在では地震観測や電磁気観測などの地球物理学的な研究も行っている。詳細は、配布したパンフレットおよびホームページ(http://www.ksvo.titech.ac.jp/jpn/index.html)を参照されたい。

本日の講演の前半の内容は火山の概論であり、プレートテクトニクス、マグマの発生、噴火の様式について述べる。後半は火山構造の探査の方法について概説し、次いで最近活発化している火山、特に研究対象にしている草津白根火山の火山活動モニタリングについて紹介する。また、大地震によって活発化する火山についても説明する。最後に噴火予知研究の今後の課題について触れる。


第1部 火山の概論

1.プレートと火山

まずプレートテクトニクスを概説し、火山の生成する場について説明する。地球の半径はおよそ6,500㎞で、中心に固体の内核と流体の外核があり、その外にマントルがある。マントルは固体であるが、長い時間スケールでは流動する。地球の中心は熱く外側が冷たいためにマントルが対流し、マントルが上昇するところと下降するところがある。このマントル対流に駆動されて、日本列島の10,000㎞東方にある東太平洋海嶺において太平洋プレートが生成し、4㎝/年の速度で西方に移動して日本海溝から日本列島の下に沈み込んでいる。

日本列島の周辺のプレートの配置は複雑である。東日本は北米プレートに、西日本はユーラシアプレートに乗っている。これに対して東から太平洋プレートが日本海溝から東北日本に沈み込み、南からはフィリピン海プレートが南海トラフから西南日本に沈み込む。日本列島は非常に複雑な状態になっている。

右図(米国地質調査所web資料)の赤い点は世界の火山の分布を示している。まずはマントル対流の上昇域でプレートが生成する中央海嶺の上に火山が存在する。例えば大西洋中央海嶺の上にあるアイスランドでは多くの火山が存在する。ここでは東はユーラシアプレート、西は北米プレートに陸地が裂けている。海域だけでなく大陸の下にもマントル上昇域はあって、東アフリカ地溝帯では陸上に裂け目があり、火山ができている。また、ハワイのようにマントル下部からプルームが直接湧き上がるホットスポットと呼ばれるところもある。一方で、環太平洋火山帯(Ring of Fire)に見られるように、火山はプレートが沈み込むところにも多く存在する。プレートの沈み込むところは、マントル対流が下降する冷たい場所であり、ここで多くの火山が発生するのは不思議なことである。この原因は次節で説明する。

2.沈み込み帯の火山

右図(木村純一による)に示すように、東北日本では厚さ100㎞の太平洋プレートが日本海溝から日本列島下に沈み込んでいる。日本周辺はマントル対流の下降域で、冷たい太平洋プレートが沈み込んでいるにも拘らず火山が形成されるのは不思議な現象である。沈み込むプレートの上面には水を含んだ岩石があり、深度約100㎞(東北日本の中央辺り)でそれらから水が放出される。この水がマントルを構成するカンラン岩の融点を下げ、マグマが生成される。これらマグマの分布は、地震波や電磁波の観測から推定することができる。

3.日本列島の火山

日本列島には右図(気象庁web)のように110の活火山がある。昔は活火山・休火山・死火山と呼んでいたが、現在は“1万年以内に活動があった火山”を活火山と定義している。火山は陸上だけでなく、南西諸島や伊豆小笠原海溝に沿って海上にも沢山ある。海域の火山は海上保安庁が航空機を使用して監視している。最近有名になった西之島の活動はこのような監視のフライトで見つかっている。

気象庁は火山活動をレベル化してホームページに掲載している。レベルは随時更新される。気象庁の発表する火山噴火警戒レベルに応じて自治体が立入規制などの対策を取ることになっている。例えば草津白根火山は現在(平成2812月)ではレベル2であり、火口から1㎞以内の立ち入りが制限されている。

4.噴火の様式

(1)山体噴火

火山噴火には、いろいろな様式があるが、その違いはマグマの粘性による。マグマが上昇してくるとマグマにかかる圧力が減るので、それまでマグマの中に溶けていたガスが溶けられなくなり、ガスとして存在することになり、発泡する。マグマの粘性が低いサラサラした溶岩の場合には、ガスはマグマの中をすり抜けて出てくるので、爆発的な噴火は起こらない。一方、マグマの粘性が高いと、ガスはマグマの中をすり抜けられずにマグマ中に溜まるために、ガス溜まりを形成し、その圧力が高まると爆発的な噴火に至る。日本の火山の多くは安山岩質のマグマで粘性が高く、爆発的な噴火をする火山が多い。

有名な火山の名前などを付けた噴火様式の分類がある。ハワイ式噴火はマグマの粘性が低く、溶岩が連続的に流れ出る非爆発的な噴火で、近寄ることもできる。もう少しマグマの流動性が低い場合は阿蘇山のようなストロンボリ式噴火で、マグマが間欠的に小爆発を繰り返し、火山弾を放出する。もう少しマグマの粘性が高いブルカノ式噴火は桜島南岳・昭和火口や浅間山の噴火で見られ、比較的小規模であるが粘性の高い溶岩のため火山灰・火山ガスや火砕流を発生する。火砕流は高温のガスを含んだ岩片がガスを放出しながら流れるが、摩擦がほとんどない状態で高速で山を下るので、非常に危険である。さらに粘性の高い流紋岩などのマグマの場合はプリニー式噴火となり、爆発的な噴火によって噴出する火山ガスや火山灰の高度は上空50㎞にも達する。巨大な噴煙柱は上空で冷やされるため、噴煙柱が崩落し下降すると巨大な火砕流を発生する。セントヘレンズ山の噴火はこの様式の噴火であり、霧島火山の新燃岳の噴火はこの様式の小規模な噴火であった。

(2)カルデラ噴火

カルデラを有する火山がある。これは、マグマ溜まりからマグマが噴出したあとに、空洞になったマグマ溜まりが沈降することによって形成した陥没地形である。カルデラ地形や噴出物からマグマ溜まりの大きさを推定することができる。

巨大カルデラ噴火は1,000立方㎞クラスの噴出物を放出する噴火である。アメリカの北西部のイエローストーンは5080万年ごとに噴火を繰り返しており、72㎞×45㎞の陥没地形ができている。ニュージーランド北島のタウポ火山帯も巨大な陥没地形の集合体で、中央のカルデラ湖であるタウポ湖は直径が60㎞もある。

日本では姶良カルデラが有名で、鹿児島湾の陥没地形を形成している。2.62.9万年前の噴火では400立方㎞の噴出物があり、火砕流によって周囲に平坦なシラス台地を形成している。現在も鹿児島湾の中に大きなマグマ溜まりがあり、それがカルデラの南縁に存在する桜島につながっていると推定されている。阿蘇山の2729万年前のカルデラ噴火では600立方㎞の噴出物があり、火砕流は四国にまで達している。神戸大学の巽教授によると、阿蘇山が再び巨大カルデラ噴火を起こすと火砕流によって700万人が死亡し、東京でも西風によって火山灰が20㎝積もると推定されている。また、北海道の屈斜路湖、洞爺湖、支笏湖、東北の八甲田、九州の阿蘇、姶良、阿多、鬼界カルデラでは、カルデラ噴火の可能性がありうると指摘されている。

(3)水蒸気噴火

今まで述べたのがマグマ噴火であるが水蒸気による爆発があり、水蒸気噴火あるいは水蒸気爆発という。マグマが上昇して地下水と接触する場合には水蒸気爆発を起こすので、マグマ噴火の前段階としても水蒸気噴火が起きる。水蒸気噴火は浅いところで起こる小規模な噴火であるため、観測点を密に配置しないと前兆を捉えにくいという難点がある。

水系の発達している火山では、水蒸気爆発の危険性がある。右図(Aizawa et al., 2009, Journal of Geophysical Research)のように熱水の元である天水は山に浸み込んで亀裂を通して深く潜ってから上がってくる。熱水は岩石と反応して、200C以下で不透水性の粘土鉱物を生成する。この粘土鉱物の不透水層は、お椀状のキャップ層を形成し、火山深部から上昇する熱水やガスをトラップする。キャップ層の切れているところからは、噴気や温泉が出てくる。キャップ層の内部の圧力が高まって、キャップ層が急激に破断すると水蒸気噴火を起こすと考えられる。また、さらに深部については、400C付近でシリカ鉱物からできた不透水構造が形成され、超臨界水をトラップすることが考えられる。これが破断すると大規模な水蒸気噴火を発生すると考えられる。


第2部 火山の観測と噴火予知の現状

1.火山の構造探査

火山では地表で噴気や温泉の流出、地震や地殻変動といった種々の現象が観測されるが、現象の理解のためには火山の構造を知る必要がある。ここでは火山の内部構造を探るための方法を幾つか紹介する。

(1)地震学的な方法

①人工地震探査

自然人工的な地震を用いて火山体の地震波速度構造を詳細に調べることができる。火山体を取り囲む数箇所で、深度数10mのボーリング孔でダイナマイトなどを爆発させ、発生する地震波を多くの観測点で受信することによって、地震波の伝わる速さの分布を求めることができる。さらにこのように決められた精密な構造を用いることによって、火山で発生する自然地震の震源位置を正確に再決定することができる。

有珠山は2000年にマグマ水蒸気爆発による噴火が起きたが、翌2001年に人工地震実験が行われた(Onizawa et al., 2007, Journal of Volcanology and Geothermal Research)。深夜に7箇所で発破を行い、288箇所で地震波の到達を観測することによって、P波速度構造が深度5㎞まで精密に決定された。さらに、得られた地震波速度構造を用いて、2000年噴火に先行する地震の震源分布が再決定され、マグマの動きを正確に解釈することが可能になった。3月27日から29日の前兆的な地震(赤い点)は山体直下の深度2~4㎞に鉛直状に分布するが、その後の噴火前(3月29日から4月1日)の震源(黄色い点)は高速度基盤の上面に沿って山体全体に広がり、最後に北西の西山火口(赤い矢印)での噴火に至ったことが分かる。

②自然地震による構造探査

人工地震では深いところまで到達できないので、自然に起きる地震を利用して地震波の伝わる速度を調べる。富士山では自然地震と人工地震によって構造が調べられた。富士山は宝永噴火(1707年)以来300年経っているが、2000年頃から特異な1~3Hzの低周波地震(通常は数10Hzの高周波地震)が観測されている。S波(横波)とP波(縦波)の伝わる速度およびその比から、低周波地震が起きているところは超臨界状態の水かCOがあり、その下にマグマが存在すると推定されている。

(2)測地学的な方法(重力探査法)

重力加速度は980㎝/sであるが、ppmオーダーで精密に重力加速度の分布を調べると地下の物質の密度分布が分かる。草津白根火山では、精密重力観測の結果、現在の山体の下に隠れた爆裂火口があることが分かった。

(3)電磁気学的な方法

①磁気探査

火山岩の中には、磁性の強い磁鉄鉱が含まれる。そのため、ヘリコプターを用いて空中での磁場の分布を観測することによって、磁性の強い火山岩の分布や、熱水で磁鉄鉱が溶脱して磁性が失われた火山岩の分布を検出することができる。

②電磁探査

MT法(Magnetotelluric method)は地磁気と地電流を測る方法で、原理は日本で発見された。右図のように、自然界の電磁波は常時上空から降り注いでおり、高周波数成分の電磁波は波長が短く、地中に入射すると電磁波は直ぐに減衰して浅部の情報を持つ。低周波数成分の電磁波は波長が長く、地中の深部にまで透入し、深部の情報を持つ。

この方法を草津白根火山に適用して、深度数㎞までの3次元的な比抵抗構造を求めることに成功した。草津白根山では顕著な低比抵抗を示す熱水変質による粘土鉱物が存在することが分かっている。この粘土鉱物は、不透水層を形成するために非常に重要である。モデル解析の結果、草津白根山の山頂域には釣鐘型をした粘土鉱物によるキャップ構造があることが分かった。

この釣鐘状のキャップ構造に対して、深部から火山ガスや高温の熱水が上昇することによって、キャップ内部の空隙の圧力が上昇し、地震が発生しやすくなる。草津白根山山頂域の微小地震は、このキャップの内部に集中している。草津白根山の定常的な地震活動は、マグニチュードマイナス2からマイナス1程度の微小な地震が1日あたり2−3個発生する程度である。

③自然電位探査

地面2個所の電位差はゼロではなく、mVオーダーの電位差がある。これを自然電位という。岩石中の亀裂に流体が存在する場合に、岩石と水の境界で電離する。このために流体が岩石中を流れると、正電荷が流れとともに運ばれることになる。このため、活火山で熱水が上がってくる箇所は正の電位異常が観測される。

三宅島の噴火前の測定では、山頂部分に正の電位異常が観測された。富士山では山頂の電位は山麓に比べて+Vあり、熱水が山頂直下で上昇する活火山であることの証拠となっている。

(4)宇宙線ミュオンを用いる方法

宇宙線ミュオンを使って、火山を透かし撮りする方法である。宇宙線が大気圏に入るとミュオンという素粒子を作る。ミュオンはあらゆる方向から飛んでくる。X線で人体を透視するのと同様に、ミュオンは空中では減衰しないが、物質を通ると密度×距離によって減衰するので、透過する強度を計測することによって物質の密度を推定することができる。

この方法によって、2004年の浅間山噴火では火口に密度の高いマグマが噴出したことが分かった。北海道の昭和新山では密度の高いマグマが広がって山体を形成していることが分かった。鹿児島県の薩摩硫黄島ではマグマが火道内で密度が低くなり、発泡しているとことが分かった。この方法は東京大学地震研究所で開発され、世界のいろいろな火山で観測が行われている。

2.火山活動の監視(草津白根火山の例)

群馬県北西部にある草津白根火山は2014年から2016年に活動が活発化している。すでに、前述のようにこの火山は1880年以来水蒸気爆発を繰り返している。これまで、水蒸気爆発をする火山の模式地として、研究の対象になってきている。2000年以降特段の顕著な活動はなかったが、2008年に湯釜火口に新たな高温域が出現し、その後の火山活動に警戒していたが、2014年3月に入ってから山体が膨張し地震が頻発し始めた。

湯釜付近の地震の精密観測のため、右図の+印には地震計を、田印には100200m掘ったところに地震計と傾斜計を設置している。右図の黒点は地震の発生個所を示していて、南北に広がっている。ほとんどの地震はマグニチュードがマイナス1とかマイナス2の小さな地震である。図の下側は東西に投影した図、右側は南北に投影した図を示したが、南からガスが上がってきているようにも見える。

山が熱くなると山を構成している物質の磁化が失われる。この消磁現象を利用して1990年頃の磁気の変化から地下の温度を調べている。

1990年の火山活動が活発化した時に、富士山と同様な低周波地震が観測された。1度揺れると1~3Hzの振動が数10秒間続く特異な地震である。水の道に熱水が入り込むとこのような地震が起きると考えている人がおり、危険であると言われている。

湯釜火口の周辺2km×2kmの範囲に200mグリッドで100箇所程度の電磁気観測を行った。その結果、湯釜火口の直下に直径1㎞の釣鐘状の粘土キャップ構造が解析された。定常的に発生する微小地震がこの粘土キャプの内側に存在することが分かった。このことは、深部から流入する高温の火山ガスや流体がこの粘土キャップにトラップされて、その中の圧力が増加して地震を誘発していると解釈された。

2014年から2016年に草津白根火山の活動が活発化した。2014年3月以前は1日に3回程度のマグニチュードがマイナス2から0の地震が発生していたが、3月から1日に100回程度、5月には1日に400回も発生するようになった。これに対応して3月に入ると、湯釜火口を取りまく3本のボーリング孔に設置した傾斜計が、山体が膨張する方向に放射状に変動を始めた。この傾斜は角度にして数マイクロラジアン(1㎞先の数㎜の傾斜)であるが、有意に大きな変動である。これらの地震の増加場所と、山体を膨張させた源の位置は、先に電磁気探査で見つかった粘土キャップの内側であることが分かった。火山の構造を探査することが、火山活動の理解に決定的に重要であることが認識された。

また、3月から噴気の組成が変わり、マグマから出てくるCOが急増し、また山体が高温化して磁化が急激に弱まることが観測された。これらの観測に基づいて、気象庁は草津白根山の火山活動監視レベルをレベル1からレベル2に引き上げた。以降、東工大火山流体研究センターでは、気象庁や他大学と連携しながら、注意深く監視観測を継続している。

3.2011年東北地方太平洋沖地震以降の活動

2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震は海溝型地震で日本列島に太平洋プレートが沈み込んで起きている。プレートには滑りやすいところとガサガサして滑りにくいところ(アスペリティ)があり、地震はアスペリティで起きるが、200㎞×500㎞の規模のものはそれまで予想できていなかった。

国土地理院は全国1,300箇所でGPS観測を行っており、常時地面の動きが分かるようになっている。下図(国土地理院資料)に震災前後の地殻の動きを示した。震災前の1997年から2000年の東北地方の地殻の動きは、西に年平均で5㎝以下であった。震災時の2日間に東向きに最大5.3m(岩手県南部)、その後の1年間で東向きに最大89㎝動いた。東北地方は圧縮された状態であったが、引っ張られる状態になった。(それぞれの図でスケールが異なることに注意)

震災後に多くの地震が誘発されているが、それまでとやや異なる地域で地震が多数発生している。また、火山活動も、伊豆地方、焼岳、那須岳で活発化している。地震の4日後の3月15日に富士山付近でマグニチュード6.4の大きな地震があった。震源が富士山の直下であったため噴火が危惧されたが、火山性の地震ではなく、断層に起因する地震であった。

巨大地震の前後に大きな噴火があるのではないかと言われている。富士山の宝永噴火(1707年)は、東海・東南海・南海の三つのトラフが連動して起きた宝永地震(M8.4)の49日後に起きている。また864年に起きた貞観噴火の5年後に三陸沖の貞観地震(M8.3以上)が起きている。東日本大震災後の現在は火山活動が活発化する時期にあると考えられる。

4.今後の課題

日本は火山が多いが、携わっている研究者は多くない。観測の機材も十分でなく、大学と気象庁が連携して設置している。人材を増やすことが重要で、次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト(平成2837年)が進行中である。大学院生を沢山育てようと努力しているが、出口となる就職先が増えていないという問題がある。

Q & A

Q1:雲仙・普賢岳で火砕流により火山学者とカメラマンが死んだが、予測できなかったのか?

A1:以前にも火砕流で被害が出たことを火山学者は知っていたものの規模が予想より大きかったのと、山体崩壊のトリガーになるタイミングが読めなかったことによると考えられる。

Q2:火山によっては大学の縄張りがあるとのことだが、阿蘇山は熊本大学で桜島は鹿児島大学か?

A2:歴史的な経緯があり、北海道は北大で東北地方は東北大であるが、九州では霧島が東大、阿蘇と桜島が京大、雲仙は九大である。現在は気象庁が大学と連携しつつ、全国の主な活火山の24時間監視をしている。

Q3:地面の電位を測るときに地面と電極の間に電位差を生じるが、どのようにして防いだか?

A3:電極が金属棒だと金属と地面との間に電位を生じるので、銅と硫酸銅とか鉛と塩化鉛のペアからなる非分極性電極を用いた。地面がガサガサしている場合は、塩水を掛けて電極を取り付けた。両端の電極の間隔は20200mぐらいである。

Q4:アスペリティが震源ならボーリングして潤滑剤を注入して地震を防ぐようなことはできないか?

A4:現状では大地震は制御できないが、実際に、断層が急激な動きをせずに、ゆっくり運動して滑るスロー地震やサイレント地震と呼ばれる現象がある。この場合は長期的な地殻変動が観測される。アスペリティの実態はよく分かっていない。水の分布や、面の粗さなどが関係すると言われている。

Q5:関東ローム層は何年か毎に降った火山灰でできているが、周期を予測することはできるか?

A5:放射性元素を使って火山灰や植物から年代を出すことができ、何処から来た火山灰か分かっているようである。何年後に何が起きるかは難しい問題であるが、ありうると考えておかなければならない。

Q6:地震に比べて、火山学者が少なく研究予算も少ないと聞いたが、今でも状況は変わらないか?

A6:地震の場合は被害が広域に及ぶので予算がつくが、火山は被害が限定することが多い。イベントが起きないと予算がつかず、噴火しない時にこそ基礎研究を進めておくことが重要である。火山観測所では技官が退職すると補充されず、無人化が進んでいる。

(記録:池田)