第 4 3 2 回 講 演 録

日時: 2015年11月10日(月)13:00~15:00

演題: 技術者の参加する電力改革を
講師: 日本科学技術振興財団 顧問、電力技術懇談会 顧問、
       元 東京電力株式会社 副社長、元 電気学会 会長 種市 健 氏

はじめに: 

前回は2010年に電力を中心とするエネルギー問題についてお話しした。その後3・11の震災で電力を取り巻く環境が一変し、電力体制は根底からの見直しが進んでいる。その電力の大改革は3本の柱で行うことが法律で定められている。一つ目は広域運営機関を作ること、二つ目は小売りの自由化を行うこと、三つ目は発送電の分離を行うことである。改革が進む中で気になるのが、話から具体的な姿が見えてこないことである。技術者が参加してステップごとに、「これはどういうことなんだ」ということをきちんと考えていかないと、改革が上手く行かないのではとの感じを持つに至った。

私は今回の改革を三つの切り口で考えてみたい。一つは官と民である。昔は600数社の会社が各地で頑張っていたが、戦時体制の時にまとめられて日本発送電という国有の事業になった。終戦後1951年に、官に任せずしっかり電力を供給していこうと現在の民の体制になった。それが今回の震災を機に主体が官に戻ったということになる。もう一つは、企画と現場、何のためにどこで何をやるかが分かっているようで分らないというのが今回の自由化ではないか。企画が推し進めることが、現場ではどのように展開されていくのかという面で、十分なチェックがないと実りがない改革になる。もう一つは事務屋と技術屋という問題である。事務屋は技術屋に任せておけば何とかなると、かなりの無理難題を言い出すことがある。成功する改革にもって行くにはもっと技術屋が参加し、発信しないといけない。これが今回のテーマをこのようにした理由である。

1.我が国の電力会社の戦後の歩み

1951年民営電力発足後の東電の発電力は、166kW、自給率80%だったのが最大6430万㎾と38倍に伸びたが、民の電力体制が不足なくこの供給責任を果たして来たのは大きな成果である。日本の資源事情から一つの電源に依存すると必ず失敗する。石油で失敗し、そのあと5本の柱を育てようと電源を見直した。自給率4%でこれだけの量の発電をするために広く世界から大規模に燃料を集め、沿岸部で大規模発電を行い、強固なネットワークで送電する仕組みを作りあげた。電気は使いやすいエネルギーとして、今後もエネルギーの電化率が上がっていく傾向にあり、今後もしっかり育てていかなければならない。この民の成果は世界に誇れるものである。

利用者が求める電力は、必要な所で必要な量が手に入ることができ、質も変動が少なく安定したもので、コストも諸外国並みのレベルでなければならない。セキュリティ面でも戦争や災害に強くなければならない。供給責任を果たすという電力関係者の責任感と世界最先端の技術を提供していいただいたメーカの方々との二人三脚が日本の場合はうまく機能して、この状態を作り上げてきた。この結果、日本の技術は世界のどこにでも売れるレベルのものになった。これまで大型研究開発は電力会社とメーカとの共同研究という形で、現場のニーズに沿った開発がなされてきた。技術は開発と現場の両輪で進化するものであるが、今後は細分化された会社での開発となるので、特に大型開発の進め方には工夫が必要である。

2.2011年以前の電力自由化

電力の歴史を見ると、アメリカと日本は民営がスタートであったが、ヨーロッパは国営が中心であった。1990年代くらいになるとニューエコノミーと言われる時代環境になってきた。また、電力は大型の設備を安定的に動かすという面で特殊・専門的な技術であったが、だんだん汎用化されるようになった。自由化指向経済の動きと技術の変化が相まって、電力も自由化の動きが始まっている。

日本の場合、3・11前までの電力自由化は第一次から第四次という形で進んできた。日本の国情と諸外国での数々の成功・失敗事例を見ながら、まず部分的な自由化から始めて行こうと決まり、50kW以上の需要家まで拡大され、全体の販売電力量の60%くらいが既に自由化されている状況にあった。この中でも新しい事業者に入ってほしいとの思いから、どこからでも同じ接続料金で電気が送れるように振替料金を廃止するなどの自由化推進策も進められてきた。

3・11の大震災で日本のエネルギー政策に大転換が起こった。太平洋岸の火力発電所や原子力発電所の多くが停止という事態が発生したことの反省から、大規模集中のスタイルから分散・再エネと需給調整を主要な成長政策の柱とするエネルギー政策へ根本から見直すことが決まった。これは原子力と戦後電力体制の否定ということになるが、その結果として燃料の輸入が年間数兆円増え、国富の流出が起こっている。4年たって安全対策も進んだ今日、このことを冷静に考えてみる必要がある。原子力を含む電力供給の在り方について、技術屋の目で主張して行く必要がある。

3.電力システム大改革の進捗と課題

(1)電力システム改革の内容

電力システム改革の考え方は、「電力システム改革が作り出す新しい生活とビジネスの形」というタイトルで経産省のHPに出ている。改革を行う3つの目的が書かれているが、現場のことをどう考えて、いつ誰がどの様にやるかの手段が書かれていない。この文言の内容については、よく考える必要がある。

この目的のもとに改革の3つの柱が出されている。1つは「地域を越えた電気のやりとりを拡大します」である。これは計画停電や災害の時に停電を起こりにくくする策として挙げられていると思うが、その司令塔として「広域的運営推進機関を創設します」となっている。日本の電力会社は各社とも資源輸入型で系統構成の考え方も似ているため、会社間の連携線は比較的弱くてよかった。これを新電力、再生エネルギーなどから地域を越えた電気のやりとりを拡大するため、この様な機関を創設するということである。再生エネルギーが将来大幅に増加したときには、どのように増強、運営するかは後に述べるように深刻な技術問題であり、ドイツの例を見てもよく考える必要がある。

次の柱として出されているのが、「電気の小売りを全面的に自由化します」である。これによって「誰でも電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになります」などいろいろ書かれている。これらは必要なことで、ユニバーサル料金とかセイフティネットの必要性は否定しないが、具体的にはいろんなケースがあり、誰がどうやって、どんな電気を送るかについては十分議論する必要がある。

3番目は「送配電ネットワークを利用しやすくする」ということである。先ほど振替料金制度がなくなり、誰でも接続料金さえ払えば利用できるようになったと説明したが、ここでは「電力会社の送配電部門を別会社に分離することで、このネットワークを誰もが公平に利用にできるようにします」となっている。電力ネットワークはすべての改革に頼りになる存在として位置付けられており、今回の大改革ではネットワークの話は表には出てこず、広域運営機関しか出てこないが、実はその裏にあるのは全国の系統がしっかりした能力を持つということが前提になっている。新しく入ってくる数百の電気事業者が活躍するために、あるいはお客様への安定供給のために、ネットワークがしっかりしていなければならない。無効電力のやりとりとか波形の問題、あるいは予備力の問題等々について技術的にきちんとした考えがあって、はじめてこの系統が期待されているような働きができるようになる。

一般家庭の電気料金を決めるときにネットワークを使う料金が8円/kWhとか言われており、高いのではとずいぶん新聞などで言われている。3円/kWhと言うのは大口の高圧需要家向けであり、一般家庭には配電設備など非常に多くの設備投資がかかっており高くなるが、このような議論があまりされずに値切ることだけ議論されている。値切ることばかりやっていると、電力系統という幹が枯れてしまうこともありうる。改革の前提になっている電力系統の位置付けをみんなで理解して、大事に育てながら使って行かないと大変なことになるということを技術者の目で訴える必要がある。

発電会社は予備力についてはこの程度確保しろとか、供給会社が再生エネルギーを買ってきたものについては賦課金をこのように負担しろとか、公正で内容が透明である形でのネットワークの使い方についても、技術屋がもっと発言していく必要がある。

(2)広域的運営推進機関

改革の第一の柱である広域的運営推進機関は平成27年4月1日に発足している。第一段階として電源の広域的な活用に必要な送配電網の整備を進めるとともに、全国で平常、緊急時の需給調整機能を強化するために設立された。ここは非常に幅の広い、深い権限を持っている。全電気事業者の供給計画の取りまとめや評価を全国規模で行う。需給や系統の運用や緊急時の処置もおこなう。系統に接続したいお客様がいた時に、接続検討の窓口となる。系統情報の公表などなど幅の広い機能を持っている。その下で発電・小売事業者とか送配電事業者とかがそれぞれの地域、役割について応分の負担と機能を果たす。

現在707社が会員になっている。ある意味では国家統制の前の状態のように多数の電気事業者が全国に生ずることになる。これが将来どうなっていくか興味のあるところである。機関の組織は図のとおりで、幅の広い分野の方が理事になっている。評議員会は理事会の諮問に応じていろいろ議論することになっており重要な役割を持っている。評議員はこの機構を動かして行くことになるが、この体制で技術的な議論ができるのか。現場の能力など分かった人がもう少し入ってもいいのではないかと思っている。新電力はどうしても利益追求型になると思うので、その中で供給の安定性と公益性をどう保つか。

広域的運営機関は幅広い業務を持っており、大量データを扱うので今システムの開発を進めている。多様な事業者が参入する中でも、電力系統利用者がエリアを越えた電力流通を円滑に行うことができるようにシステムを作る。まず需給状況の監視は、従来は各電力が行っていたが、これを全国規模でやることになる。それから供給計画や需給計画の管理、さらに連携線の管理などをやっていくために、現在幅12mの系統盤をはじめハード・ソフトの搬入をやり、通信の対向試験も開始している。4月に新システムが稼働の予定であるが、いろんな状況に応じてシステムが対応できるか、抜けがないか不安がある。

2016年の小売自由化に参加する電気事業者はライセンスをとって広域運営機関のメンバーにならなければならない。事業類型は右図の5つに整理される。

この様な体制で動いて行く中で、いろんな方々が一致協力して安定供給を確保しなければならないのは当然であり、そのための措置として、それぞれにつぎのとおり義務付けられている。

今の電力会社である一般電気事業者の送配電部門には、その地域の需給バランスをとる義務を負わせる。送配電網の建設・保守を義務付ける。最終保障サービスを義務付ける。さらにユニーバーサルサービスと称して、離島などに対地域と遜色ない料金水準で供することも義務付けられている。

小売り事業者には、集めた需要を賄うために必要な供給力を確保することを義務付ける。当たり前と言えば当たり前の義務である。

広域的運営推進機関による措置としては、将来に向けて必要となる電源を公募することになっている。

以上の施策のベースとして、これまで電力が育ててきたネットワークシステムが如何に重要な働きを期待されているかがわかる。

(3)小売りの全面自由化

改革の第二の柱は小売りの全面自由化である。「全国で7.5兆円の電力市場が開放されて、8420万件が潜在的な顧客になるので大きなビジネスチャンスになる」とあるが、どういう風にビジネスチャンスになるか、触れられていない。「再生可能エネルギーや分散電源への新たな投資やスマートメータ等への関連投資が増える」などとされているが、誰が何のためにやるか書かれていない。

「家庭での契約の選択肢が増え、ほかの電力会社から買うなど多様な料金メニューが生まれる」となっているが、具体的な条件の提示がないと考えようがない。

事業機会の拡大はそのとおりで、発電部門と小売り事業者には多様な事業参入が行われるだろう。東電のセット販売では、アライアンス先はソフトバンクなどいろいろ出ている。ポイントサービスではTポイントとPontaがあがっている。しかし、なんで儲けるかが分からない。

(4)デマンド レスポンス

電力改革の基本として需給調整が強調されているが、その重要な役割を占めるのがデマンド レスポンス(DR)である。系統としてピーク需要を押えることができたとしたら、発電所の建設が不要となり、その分建設費などが安くなる。これは次に述べるホームマネージメントシステム(HEMS)とも合わせ、量、価格、信頼性とか、どう評価して行くかを検討することは技術的な課題だ。いずれにしても計画調整の量と質と価格をどう考えて行くかは重要な検討課題であり、世界各国の状況も参考にして設計してゆくべきものである。

5HEMSHome Electric Management System

HEMSにより家庭でいろんなデータが見られるようになる。第一歩は自分の使用量が見えるようになることであり、スマートメータの導入は10年程度かけて進んで行く。それ以外にもいろんな使い方へ拡張していく可能性がある。そのための実験が行われているが、実験の結果をどう使っていくかがこれからの課題である。

6)サイバー攻撃への警告

広域運営推進機構でも大量のデータがやりとりされる。小売りと発電会社との間でも相当量のデータのやりとりがされる。各家庭に8500万台ものスマートメータが入る。こうなると電力系と通信系が混然一体となったシステムとなってくる。そうすると警戒しなければならないのがサイバー攻撃である。「ブッラックアウト」や「ダイ・ハード4.0」などで取り上げられているようにサイバー攻撃で甚大な影響が出る恐れがある。今までの電力系統では電力系統制御に自前の独立回線を使っているので、電力基幹系統までの影響は考えられなかったが、電力系統が繋がった場合にどうするかは考えなければならない。

7)発送電分離後の既存電力会社の体制

第3の柱で20182020年目途に発送発電部門が分離される。東電の場合には原子力賠償問題もあり、2016年に発送電分離が行われる。こうなってくると、発電会社が原子力のような大型の投資・研究開発ができるか問題になってくる。

4.将来の電気エネルギー供給

最近、政府で2030年の望ましい発電方法の組み合わせが取りまとめられたが、新しい基準で整備された原子力発電を再稼働させることが前提となって取りまとめられている。イギリスでは導入したい発電方式である石炭火力ではCCSにしてCO2を出さない形のものしか認めないとか、原子力なら固定価格での買取り(FIT)も考えるとか言われている。各国とも原子力などをどのように組み込むか苦労している。日本は政府の出したものを目標に進んで行くことになる。

一つの大きな柱と言われているのが再生可能エネルギーである。国産のエネルギーを開発して使うことは、コストの問題を別にして大変素晴らしいことである。2030年政府の目標で光エネルギーは5300万kWであるが、すでに認可済みの容量は7400万kWもある。仮に認可済みの発電所が全部運転したときの賦課金の累積は50数兆円をこえる。新エネルギーを入れるときは、その覚悟をもってやらなければならいが、本当にそれでいいのかはもう少し考えなければならない。発電量が大きく変動するものが多く入ってくると、周波数の安定などから変動を調整する発電所を別途設けなければならない。現在ではこれを火力発電所が中心に担っているドイツでは火力発電所の運転が惨憺たる状態になっている。表には載っていないが、ヒートポンプの様に新エネルギーの一つである環境熱を上手に使うことによって、発電・送電のロスを上回る電気エネルギーを利用できるようになる。ヒートポンプの技術は世界一と言ってよく、環境熱の積極的な利用を考えるべきである。

EUは自然エネルギーの活用に積極的で2030年には、「温室効果ガスを40%減らす、エネルギー効率を30%上げる、再生可能エネルギーを27%増やす」と大変積極的な目標を掲げて、ドイツはかなり忠実に活動を行っている。ドイツでは北にある北海に風力発電所がどんどんできており、南部には大きな需要と原子力発電所がある。需要が増える分と原子力発電が減る分の大部分を風力発電で賄おうとすると、北から南への送電線をたくさん作らなければならなくなるが、地元に反対されて全くできていない。2020年は原子力発電がすべて止まる年で、その時までに送電線へ400億ユーロ(5.2兆円)の投資が必要といわれている。今までは5社くらいの会社が全体の電力設備を持ち、需給調整を行っていたが、発送電分離で既存の発電会社は新型の発電所でももっぱら調整用にしか使われず、場合によっては年間数百時間しか稼働しないケースも出てきて、経営が圧迫されている。送電会社には巨額の送電線を自ら作る力はない。このようにドイツのメーカ、電力会社は過大な再生エネルギーと原子力の停止により引き起こされる問題に直面し、大変な状況になっている。ドイツの例は参考にすべき一つのケースである。

電力系統は、従来の原子力や火力発電所と太陽光や風力などの再生可能型発電所が一体となって50Hzで脈打っており、96%が輸入の資源で命を保っている。今は再生可能エネルギーがぽつぽつとぶら下がっている状態だが、これが大きくなってくると、全体が大きく振り回されるようになる。諸外国の例を見ながら、冷静に日本のあるべき姿を技術者が意見を言ってまとめて行く必要がある。

輸入エネルギーからは最高の電気を取り出すというのが、日本としての最大の選択肢である。いま、世界一の技術をもつヒートポンプを活用して、資源効率を高めることが急務であろう。

.おわりに

以上述べたような技術的な話を一般の人たちに理解してもらわなければならないし、一般の人も理解していく努力が必要である。日経の社友の鳥井氏が講演「共進化のための市民側の課題」で、合理的で科学的な議論のリテラシーを持ってもらうために複雑さ、リスク・確率、数字の意味、失敗の意味、専門家の尊重など市民側の課題について言及されている。

アメリカの電力会社で副社長を務め、学会で長い間活躍を続けてきた電力技術分野の重鎮であるCasazza氏が次の様に述べている。

「アメリカで電力の自由化が進められたが、自由化は技術者の目で見ればアメリカの電力産業の挫折ではないか。教育制度も大変な状態になっている。発言しない電力技術者は社会的責任を忘れてしまったのではないか。電力自由化政策形成の際の電力技術者は、怠慢であったがために政策議論の際に蚊帳の外に置かれた。政府や企業の中で起こっている技術者の凋落、大学で電力技術コースが減少などいろいろ発生した。電力政策に民主主義の精神を取り戻し、電力技術者は社会的責任を自覚する必要がある。」

まさに日本はこういう状態に置かれている。いまこそ電力技術者は目覚めて、動かなければならない。

Q & A

Q1:かつてアメリカで送電線の事故が波及してニューヨークの大停電が発生した。日本では系統は大きくは電力会社ごとに分かれており、A電力で発生した事故がB電力に波及する可能性は低かったと思う。しかし、今後日本で送電網が大規模運営されると、ある事故がどんどん波及して大事故になることはないのか。

A1:大いにそういう心配はある。ただし送電線が出来上がるのは30年後である。再生エネルギーを全国で融通するということになると、全国規模で融通できるだけの容量をもった送電線が必要になる。しかし、送電線の建設には10年や20年はかかる。そういう意味で全国に波及するような送電線が出来上がって、さらにネットワークが密になるのは30年を過ぎるだろう。

Q2:電力が自由化された時、例えばどこかの風力発電の電気を買ったとしても、電気の流れは一体なので区別はできないのではないか。電力会社と需要家の間でどのような契約を結ぶのか。契約で何が規定されるのか。

A2:私も疑問がある。電力メータは地域の電力会社が設置する。電力の品質はどこから買っても同じである。これではどこから買ったということは本質的な問題ではなくなる。例えば弱小電力から購入しているとして、その業者がトラブルなどで発電できなくなっても、需要家には同じ品質の電気を供給することになっている。本来なら供給支障になってしかるべきではないか。しかし、このあたりについては何も言われていない。もう少し検討が必要と思う。

Q3:発電ソースが買えるのか。例えば再生可能が大好きで、原子力が大嫌いな人が、再生エネルギーが高くても使いたいと言う契約ができるのか。

A3:できるようになると思う。どういう設計でどういう値段をつけるか、まだ具体的な話は出ていない。太陽光発電や風力発電がまとまってくれば、この時間だったらいくらになるとか計算ができるようになるが、実際どうなるかは見通せない。しかし、理念としてはありうる。

Q4:発送電分離で送配電会社が独立会社になっているが、設備投資をしようとしたら自社だけでは難しく、費用の面を含め、発電会社の了解を取る必要が出てくるような事態になるのではないか。その点はどの様になりそうか。

A4:ネットワーク会社とは情報遮断されるので、発電会社として資金調達して設備投資することになる。発送電分離したドイツでは、系統を使って融通できなくなったので電力会社は儲からなくなった。儲けるためには固定価格買入れ保証がある風力発電のみにしか投資しなくなり、その結果、ドイツでは電力供給で大変なことになっている。設備投資には資金集めから何から何まで全部自前でならなければならなくなる。

Q5:再生可能エネルギーの内、地熱発電は規制もあって今はほとんど手についていない状態と思う。地熱エネルギーは火山国である日本には無限に眠っていると思うが、何か限度があるのか。

A5:環境問題とか温泉源への影響とか課題はあるが、それは浅い所の話であり、深い所にある地熱を対象とした技術開発をしていけば、地熱エネルギーは無限にある。今研究も進められている。初期の設備投資に金がかかるが、この点について改善していけば可能性はある。しかし、今どこの電力会社も研究開発費が削られてほとんどない。日本として必要な技術開発は、学者だけに任せず、技術者も参加して進めて行かなければならない。

(記録:田邊 輝義)